コロナ禍以降、日本では若者や女性を巻き込んだ新たなゴルフブームの到来が注目されています。
本記事では令和のゴルフブームについて、これまでのゴルフブームとは異なる特徴や、ブームが到来した理由について解説していきます。
さらに記事後半では、ゴルフブームがいつまで続くのかについて、業界の動向を踏まえつつ具体的に解説します。ゴルフ業界に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
2022年の今、ゴルフは流行ってる?
「令和以降、ゴルフブームが再び加熱している」と耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
確かに2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、私たちの生活が物理的に大きく制限されるなかで、ゴルフは三密を避けつつ楽しめる娯楽として注目を集めています。
それでは、2022年現在、ゴルフはどのくらい流行っているのでしょうか。その謎を読み解くヒントが、総務省統計局がまとめた2020年度の家計調査です。
同局によると、二人以上世帯のゴルフプレー頻度を世帯主の年齢別に比べたとき、40代は56回で前年度対比7.7%増、30代は43回で前年度対比87.0%増、29歳以下は26回で前年度対比225.0%増となっています。
この統計結果から、新型コロナウイルスの影響で私たちの生活様式が変化するなかで、50代未満の世代を中心にゴルフ関連の出費が増えていることがわかります。
現在のゴルフブームの特徴
上述のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として、新たなゴルフブームが到来しています。
しかし今回のゴルフブームは、1957年に第5回ゴルフワールドカップが日本で開催されたことに起因する第一次ゴルフブーム、および1966年に再び日本で開かれたゴルフワールドカップがきっかけとなった第二次ゴルフブームとは一線を画しています。
現在のゴルフブームについて、大きな特徴は以下の3つです。
- 若者世代におけるゴルフ人口の増加
- ゴルフ女子の急増
- ゴルフという競技のファッション性
それぞれ具体的に解説します。
若者世代におけるゴルフ人口の増加
まず特筆すべき特徴は、若者世代におけるゴルフ人口の増加です。
前段で解説したとおり、総務省の家計調査によって2020年以降は20〜40代におけるゴルフ消費が拡大しています。昨今ではゴルフ場に足を運ぶと、全員初心者の若者グループが1つのゴルフバッグをシェアしながらゴルフを楽しむ様子も散見されます。
また、日本プロゴルフ協会が2020年に関西および中部地区で実施した、来場者動向調査も興味深い結果を示しています。
同調査によると、20代のゴルフ場来場数は増加傾向にあり、20〜24歳では昨年度対比で125%増、25〜29歳では昨年度対比60%増を記録したとのことです。
さらに、若年層来場者のうち大半は新規来場者であるため、若者の間でゴルフが人気を集めていることがわかります。
従来、ゴルフはビジネスツールとして広く認知されてきました。
休日に会社の上司から誘われて、興味もないまま半強制的に参加させられたことがきっかけでゴルフを始めたという方は少なくありません。
近年、ゴルフは大人の処世術という考え方に転機が訪れています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、新規感染防止の観点から自粛ムードが強まり、飲み会やカラオケといった三密での余暇が制限されました。
同時に、リモートワークをはじめ働き方の多様化が進み、時間と場所に縛られず働ける社会人が増えています。
その結果、時間と体力を持て余している若者世代の間で、新たな趣味としてゴルフが人気を集めているのが現在のゴルフブームの特徴です。
ゴルフ女子の急増
男性だけでなく女性も巻き込んだ流行であることも、令和のゴルフブームの大きな特徴といえます。
確かに令和以前も、国内外問わず多くの女子プロゴルファーは存在し、なかにはスポーツ番組やバラエティ番組で活躍してお茶の間の人気者となった女子プロ選手もいました。しかしながら、ゴルフ人口全体では男性比率が圧倒的に高く、年齢層の高いスポーツであったことも事実です。
また、令和に入り、従来のゴルフ人口に変化が生じています。
大手ゴルフショップのゴルフパートナー社が実施した調査によると、ゴルフ人口全体における女性比は2019年以前では27.2%であったのに対し、2020年以降は37.4%を記録し、実に前年度対比10ポイント以上の成長を記録したといいます。
ゴルフ女子が急増した背景には、やはり新型コロナウイルス感染拡大にともなう生活様式の変化が考えられます。
不要不急の外出が制限され、運動不足が深刻化している一方で、使えるお金はあるという状況から、ゴルフを始める女子が増えているといえるでしょう。
加えて、近年は屋内型ゴルフ練習場が増えていることも、初心者の女子が人目をはばからずにゴルフを始める後押しとなっています。
ゴルフという競技のファッション性
令和のゴルフブームの担い手である若者を中心に、ゴルフという競技のイメージが変容しつつあります。
従来、ゴルフスポーツの担い手は高度経済成長期やバブル経済を経験した中高年でした。好景気のなかで社会に定着したゴルフというスポーツは、バブル崩壊後の経済低迷期に生を受けた若年層にとって「金満で敷居の高い娯楽」という印象が強かったのが事実です。
しかし、近年はゴルフのカジュアル化が進んでいます。
プロゴルファーの中には俳優並みのイケメンプレイヤーもいれば、ファッションモデル顔負けのプロポーションで、颯爽とゴルフウェアを着こなす女子プロ選手も少なくありません。
こうしたプレイヤーたちの存在がゴルフのイメージを塗り替え、新規ゴルファーの増加に起因していると考えられます。
ゴルフ人気が復活したのはなぜ?
前段で紹介した、令和のゴルフブームの特徴を踏まえると、令和になってゴルフ人気が復活した理由は大きく3つ考えられます。
- 新型コロナウイルス感染拡大にともなう生活様式の変化
- 若者世代からの支持
- 競技イメージのカジュアル化
新型コロナウイルス感染拡大にともなう生活様式の変化
令和になって、ゴルフブームが再び熱を帯びた最大の理由は、言うまでもなく新型コロナウイルスの存在です。
特にウイルス発生当初は世界規模で人の移動が制限され、日本国内でも幾度にわたって緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されました。
不要不急の外出は控えるように勧告され、社会のいたるところで三密の回避が叫ばれた結果、私たちの生活様式は変化を余儀なくされます。飲み会は開けない、旅行にも行けない、など感染拡大防止のために趣味を奪われた社会人は少なくありません。
結果として、三密のいずれにも該当せず、適度な運動にもなり、同行者とのコミュニケーションも弾むゴルフというスポーツが、ウィズコロナ時代の新たな余暇として定着したと考えられるでしょう。
若者世代からの支持
現在のゴルフブームを下支えしているのは若者世代といえます。いつの時代も新たな流行を作り出し、それを拡散させ、社会に定着させるのは若者です。
前述した新型コロナウイルス感染拡大による生活様式の変化により、新たにゴルフにチャレンジする若者が増えました。
若者世代の新規顧客増加にともない、国内160か所のゴルフ場や練習場では19〜20歳の利用料金を無料にする取り組みを実施しました。この取り組みは若者客のリピートやゴルフ市場の拡大に貢献したといわれています。
さらに、若者世代のニーズに応えるように、ゴルフ場のプレースタイルも多様化しています。
三密を回避するために休憩を挟まずプレーする「スループレー」は、結果としてプレー時間の短縮を実現し、若者にとってゴルフはより手軽なスポーツとなりました。
さらに、単独のプレー希望者が複数人集まって同じコースを回る「一人予約」によって、人数集めの煩わしさはなくなり、ゴルフは一人からでも始めやすい趣味へと生まれ変わったのです。
こうしたプレースタイルの変容が、若者世代のリピート顧客増加をもたらしているといえるでしょう。
競技イメージのカジュアル化
若者世代のゴルフ人口増加によって、ゴルフという競技のイメージがカジュアルになったことも、現在のゴルフブームの要因と考えられます。
例えば、横浜市の某ゴルフ練習場では、練習場のワンフロアにDJブースを設置し、まるでクラブのような雰囲気を演出するという取り組みを実施しています。ライトアップされてパーティー感あふれるフロアでは、トップトレーサー・レンジが利用可能です。
打球の飛距離や目標への近さを競うドライビングコンテストが開催され、初心者でもボーリング感覚で気軽に参加できるなど、新規顧客の獲得と定着に向けた施策となっています。
さらに、茅ヶ崎の某ゴルフコースではドレスコードを廃止し、Tシャツやジャージなどのラフな格好でラウンドを回れるようにしました。施設内にはおしゃれなカフェやパソコン作業に適したコワーキングスペースを設置し、不定期で愛犬同伴のラウンドやママゴルファー限定ラウンドを開催しています。
このように、全国各地でさまざまなゴルフ関連業者が「ゴルフは取っ付きにくい」というイメージを払拭し、誰もがカジュアルにゴルフを楽しめるような工夫を凝らしているのが現在のゴルフブームにつながっています。
ゴルフブームはいつまで続くのか
ここまで、2022年現在のゴルフブームについて解説しましたが、新たに生まれた令和のゴルフブームが果たしていつまで続くのか気になりますよね。
ここでは、令和のゴルフブームの未来を予測するうえで知っておきたい3つのポイントを紹介します。
ゴルフ人口自体は減少している?
はじめに知っておくべきは、ゴルフ人口は全体的に見ると減少し続けているという事実です。これまで説明してきたとおり、総務省統計局によるとコロナ禍以降の20〜40代のゴルフ消費は増加傾向にあります。
しかしながら、レジャー白書2022によると、2021年の調査でゴルフコースでプレーしたことのある参加人口は560万人となっています。同調査の2010年では810万人、さらに2005年では1,080万人であったことを考慮すると、ゴルフ人口全体は直近10年間で約290万人、割合にして約70%にまで減少しています。
ゴルフ人口全体における若者世代の人口比率が増えている一方で、ゴルフ人口の絶対数は一貫して減少傾向にあるという事情は知っておくべきでしょう。
ただし、ゴルフ人口減少の要因としては、働き世代の人口減少も考えられます。総務省の調査によると、2020年の20歳から59歳総人口は約6,000万人なのに対し、2005年では約6,900万人となっており、この15年で働き世代はおよそ900万人減少しています。
また、スポーツ庁の調査によると、1年間に実施したスポーツの全体割合は、ゴルフのコースや練習場を利用した人は11.8%、水泳は3.6%、テニスは2.8%、バドミントンは2.7%となっています。
ウォーキングや体操、トレーニングなど、気軽に取り組める運動を除いた場合、ほかのスポーツに比べ、ゴルフ利用者は多いことが分かります。
そのため、ゴルフ人口の総数が減少していているとはいえ、働き世代の減少や他スポーツよりは利用者が多いことなどの理由から、ゴルフへのニーズは未だ高い状態であるといえるでしょう。
(出典:スポーツ庁:「令和3年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」より抜粋)
ゴルフが嫌いな若者は少なくない
次に、ゴルフの若者人気が拡大傾向にあるとはいえ、依然として大多数の若者はゴルフに関心がない、あるいはゴルフに良い印象を持っていないことも事実です。
若者がゴルフを嫌うのにはさまざまな理由が挙げられます。
特に、ゴルフはほかの娯楽に比べて初期費用が高く、人付き合いが避けられないという点に嫌悪感を示す若者は多いといえるでしょう。
したがって、ゴルフブームが長続きするためには、時間やお金に余裕のない若者や、不必要な人付き合いを避けたい若者でも気軽にゴルフを始められるような制度やサービスが必要になります。
ゴルフ業界の衰退は止められない?
ここまでの内容を総括すると、ゴルフ業界の衰退は避けられないかのように感じてしまいます。
確かに、少子高齢化と人口減少が長期トレンドとして避けられない以上、若者世代の経済負担は増え続けます。そうなれば、プレーするのに多額の費用がかかるゴルフは、未経験者にとってハードルが高く、ゴルフ人口の減少にともなってゴルフ業界も衰退し続けるというシナリオは信憑性を帯びてきます。
ただし、ゴルフ業界の衰退を止められない訳ではありません。
ゴルフ未経験者でも気軽にゴルフ場に行きたくなるようなイベントやサービスが増え、若者世代を中心にゴルフ人口を維持できれば、ゴルフ業界存続の可能性は十分に考えられます。
ゴルフブームを担う若者や女性をターゲットにしたゴルフ事業もおすすめ
令和以降、若者や女性のゴルフ人口は増加傾向にあります。そしてこうした若者や女性の新規ゴルファーこそが、今後のゴルフブームを担い、ゴルフ業界を支える存在になっていくでしょう。
各調査機関の報告によれば、若者や女性の間でゴルフ需要が拡大していることは事実です。そのため、若者や女性のゴルフ未経験者をターゲットとしたゴルフ事業は非常に将来性の高いビジネスといえます。
これから新規事業を興そうと考えている方は、需要と社会貢献性の高いゴルフ事業に着目してはいかがでしょうか。