時間や人目を気にしないで練習できるインドアゴルフ場は、「シミュレーションゴルフ」の性能向上に比例するように注目が高まっています。
しかし経営者の目線でみると、「シミュレーションゴルフは思ったほど儲からない」という噂があります。本当でしょうか。この記事では、その噂の信憑性について検証してみます。
シミュレーションゴルフ導入のメリット・デメリット
シミュレーションゴルフは、室内に居ながら外でのプレイを擬似体験できる機器のことです。
まずは、この機器(システム)を導入した場合の経営的メリット・デメリットをみていきます。
シミュレーションゴルフ導入のメリット
インドアゴルフレッスン場では、天候に左右されずに精度の高い練習ができるため、これまでよりも多くの練習者が来店することが期待できます。
また、レジャー施設やホテルに導入することにより、「ちょっとプレイしてみるか」という客層をつかまえることができますし、この設備があるから宿泊はこのホテルに決定しよう、というニーズもありそうです。
ゴルフバーのような飲食店の付加価値として導入する場合は、これまで来店しなかった新たな客層の開拓につながります。
ちなみに、経営について広い意味で考えるなら、シミュレーションゴルフは「福利厚生」にも使えます。企業が従業員のためのレクリエーション設備として導入する場合、従業員満足の向上だけでなく、節税対策にもなります。
シミュレーションゴルフ導入のデメリット
シミュレーションゴルフ設備の導入という「一定の設備投資」を行うわけですから、そのための費用が掛かります。
その投資額を前述の「導入のメリットによる収入の増大」によって何年で回収できるのか(つまり、事業として成り立つのか)を考慮する必要があります。
なぜシミュレーションゴルフは儲からないと言われる?
導入費用が大きいことが最大の理由でしょう。安価なものではないことから、「投資回収が難しい」という指摘はもっともなことです。
しかし、あくまで投資ですから、きちんと計画を立てていれば一概に儲からないとは言えないはずです。シミュレーションゴルフの導入によりアップする収入により、どれくらいの期間で投資回収ができ、そして黒字化できるか考えることが大切です。
実際に、シミュレーションゴルフを導入している都内のインドアゴルフスクールは、短期間での投資回収に成功しています。
複数の要因が考えられますが、やはり専門の機器の導入によって打ちっぱなしなどと明確に差別化されたことがポイントです。
結論として、シミュレーションゴルフすべてが儲からないのではなく、戦略的な経営ができていないことが要因と考えることができそうです。
シミュレーションゴルフの需要と「儲け」へのインパクト
シミュレーションゴルフの導入可否を判断する際は、「売上がどれくらい増えるか」「導入のコスト(経費)をどれくらいコントロールできるか」がポイントになります。
この章で、まずは売上の増加分についてみていきます。想定しているのは、シミュレーションゴルフスクールです。
シミュレーションゴルフスクールの場合、その売上の中身は「顧客単価(入会金、会費、ビジター会費、レッスン料など)×利用者数」です。
この計算式からわかるように、売上をアップさせる方法として「単価を上げる」方法と「利用者を増やす」方法とがあります。
この点において、シミュレーションゴルフの導入は最適です。導入によって単価を上げやすくなりますし、客寄せにもなるからです。
しかし、一般的には単価が上がると利用者が減ります。これはシミュレーションゴルフという付加価値をつけたケースでも同様のことがいえます。
そのため、利用者数の増加分と減少分の差し引きについて考えた上で、導入前後の売上を比較することがポイントになるでしょう。
シミュレーションゴルフの経費(初期費用)に関すること
毎月の収支は黒字でも、最終的には初期費用を毎月の利益で回収していく必要があり、これができない事業は失敗と言えます。
シミュレーションゴルフは初期費用の大きな投資ですから、これをいかにしてコントロールできるか考える必要があります。
経費の考え方
(単位:万円)
年度 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|---|
初期費用 | 1,000 | ||||
売上 | 800 | 900 | 1,000 | 1,100 | |
経常経費 | 600 | 610 | 630 | 680 | |
単年度収支 | 200 | 290 | 370 | 420 | |
累積収支 | ▲1,000 | ▲800 | ▲510 | ▲140 | 280 |
たとえば上記のような収支推移の場合、初期費用の1,000万円は4年で回収できたことになり、以降の利益が自分の手元に残る分になります。
あくまで一例ですが、シミュレーションゴルフの導入に際しては、このような視点で計画を立てることが大切です。
また、シミュレーションゴルフ場を開業する場合や既存の商売にシステムを導入する場合に、国の補助金が使える場合があります(つまり開業のための手持ち資金が少なくて済む)。興味のある方は、以下の記事を参考にしてください。
ゴルフ事業には、ゴルフショップ、インドアゴルフスクール、ゴルフ場経営、ゴルフバーなどさまざまなものがありますが、いずれも設備費用やテナント料、人件費などに多額の経費がかかります。しかし、ほかの事業と同じようにゴルフ事業でも利用できる[…]
シミュレーションゴルフの施工価格(導入費用)の目安
シミュレーションゴルフ設備を導入する場合に必要なものについて、導入費用とあわせてみていきます。
ゴルフバーなどの場合は、さらに厨房設備が必要になります。
必要物品 | 説明 | 価格帯(例) |
---|---|---|
ゴルフシミュレーター | シミュレーターには各地の(場合によっては世界の)有名ゴルフコースのデータが入っており、ツアープロの気分が味わえます。 また、スイングをカメラ撮影することによりフォームチェックできるほか、球筋・回転数なども確認することができます。 | 70万円(中古)~700万円 |
基本工事 | 内装工事や電気工事、看板工事などを行います。価格は、その内容により大きく異なります。 | 数百万円~ |
防音工事・防音設備 | 「クラブでボールをヒットする音」「ボールがネット(または壁・床)に当たる音」という二つの騒音が発生します。 ロケーション(郊外か街中か)にもよりますが、床や壁に防音材を入れたり、防音機能があるマットやネットを設置します。 | 5万円~(消音スクリーン) 25万円~(ブースクッション※) |
モーションカメラ | 利用者のスイングチェックに使用します。前後2台設置することが多いです。 | 30万円~ |
プロジェクター | シミュレーターの映像を壁に投影する装置です。 | 25万円~ |
圧縮チューブマット | 打席マットとスクリーンの間に敷き詰める、ボール跳ね返り軽減材です。 | 14万円~ |
スタンスマット | いわゆる打席のマットのことです。 | 6万円~ |
※ブースクッション:壁と天井に敷設する「防球用クッション材」のこと。
シミュレーションゴルフの耐用年数
ゴルフシミュレーターの法定耐用年数は「スポーツ具」に分類されるため3年です。ゴルフシミュレーターの実寿命に比べ、耐用年数は短く感じます。
ということは1年あたりの減価償却額が相対的に多いということになります。つまり、経常経費額が膨らむので、利益を生むほかの事業を営んでいる場合には、シミュレーターの導入により事業全体で利益の圧縮(節税)につながります。
シミュレーションゴルフはメーカーによる違いもある
ゴルフシミュレーターの価格帯は前述のとおりですが、各社各様の製品を販売しています。ここではいくつかの機種とその値段の目安・特徴を紹介します。
GOLFZON GDR:300万円~
簡単な操作で球筋やスピン量などを計測・再現できるのが特徴。セルフスイングチェックも簡単です。レッスン場に特化した豊富な練習モードや、自身データのスマホ確認・管理ができるなど、ユーザーに優しい機種です。
GOLFLAND G-SHOT:250万円~
練習モードからラウンドプレイまで充実。個人の方でも導入検討できる低価格で、コストパフォーマンスは高いです。小さなスペースでも導入可能で、世界の有名コースでプレイできます。
3D BIGBAN:380万円~
フルハイビジョン画像でボールの着地点をリアルに再現。多彩なゲームモードで練習にも飽きがきません。世界の有名コース70以上を搭載しました。センサーがとらえる「弾道の反映スピード」は業界最高レベルです。
Theon Japan スピンシステムT-140S:500万円~
毎秒2万コマ計測できる高速カメラ搭載。独自のマーキングボールで90%以上のスピン再現率を誇ります。左打ちを標準装備しています。ボールショットのタイムラグが0.1秒で、業界最速です。
GPRO X-Swing-G:360万円~
シリーズ最上位機種で、2台の高速カメラでスピン量を正確に計測、解析するカメラセンサータイプのシミュレーターです。クラブ起動もスロー映像で確認でき、スイングチェックが一目瞭然です。
シミュレーションゴルフの導入で儲けを増やすことはできる!
ここまでみてきましたが、シミュレーションゴルフを導入する場合のイメージは持つことができたのではないでしょうか。
結局、「シミュレーションゴルフそのものが儲かる・儲からない」の話ではなく、始めようとする人の「経営センスの問題である」という結論になります。
「流行りものだから投資する」というスタンスではなく、事業計画を立て、収支計画も作成して行うべき『事業』であるという認識を持つ必要があるようです。
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