「コロナ禍の安全な外遊び」と言われて久しいゴルフですが、今回はインドアゴルフについて取り上げてみます。
以前は、ゴルフ練習やレッスンといえば、ほぼアウトドア練習場でしたが、最近はインドアゴルフ練習場をよく見かけるようになっており、きっと増えてきていると予想されます。しかしインドアとアウトドア、どのような違いがあるのでしょうか。
今回は、主として経営者の視点から両者を比較していきます。さらにインドアゴルフについて、ビジネス形態、市場規模・動向などについて説明しています。ビジネスとして興味のある方に、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
インドアゴルフのビジネス形態について
ビジネス形態を分析する前に、まずは「インドアゴルフとは何か」という定義づけを行います。
この記事ではインドアゴルフを、「屋内で、ゴルフの練習またはゴルフレッスンを行う施設」とします。場合によっては、練習とレッスンの両方を行う施設もあります。
インドアゴルフの経営上のメリット
インドアゴルフ経営のメリットですが、集客が天候に左右されない、というものがあります。夏は涼しく、冬は暖かい練習環境を提供できます。逆に北国のアウトドア施設では、雪が降ればクローズせざるを得ません。
また街中にあるインドアの場合は「アクセスが便利」という集客上の利点もあります。
2番目のメリットは、インドアでは人目を気にせず練習できるので、初心者や特別な練習をしたい上級者などを集客できます。特に「個室型」の練習施設は、心ゆくまでいろんなことを試したい人たちに人気があります。
3番目は、スイングやボールの速度、発射角など細かいデータを分析できる機械を導入すれば、いろいろな自己チェックをしたいゴルファーが来店します。また、映像でフォームチェックできる設備も人気です。パター練習において「カップへのラインをビジュアル化するマシン」なども、アウトドアではできない練習であり、需要があります。
4番目は、利用時間です。24時間無人で受付しているインドア施設では、深夜や早朝でも練習が可能です。ゴルフプレー日の前日夜や当日早朝に、練習して調子をみたいゴルファーが来店します。
インドアゴルフ経営の注意点
インドアゴルフ経営には上記のメリットがあるのですが、経営するに際しては以下の点に注意する必要があります。
まずはコンセプトを決めます。ターゲットはサラリーマンなのか家族連れなのか、はたまた女性なのかです。そしてそのターゲットにあった場所を選定し、内装を施し、設備・マシンなどを導入します。
次に考えるのは、固定費です。これをいかに抑えるかを、考えます。ビルの賃料や人件費など、固定費の大きさは収益に直結します。オーナー自ら受付を行うなど、経費節減の工夫を行います。
さらに「リピーターを増やす努力」を行います。1人の会員が、できるだけたくさんのお金を落としてくれるように、イベントを開催したり会員同士のコミュニティを作ったりなど、「この練習場に定期的に来ていないと寂しい」と思ってもらえるようなプランを考えます。
インドアゴルフ練習場の市場規模・動向
さて、インドアゴルフの市場規模はどの程度なのでしょうか。商売になるだけのマーケットが存在するのでしょうか。順に見ていきます。
ゴルフ練習場の市場規模は?
ゴルフ練習場全体(インドア、アウトドア合計)の数は、これまで減少傾向にありましたが、最近は横ばいです(下表、オレンジ線)。
この状況だけを考えると、これからゴルフ練習場業界に進出するのは、クエスチョンマークが付きそうです。さらに分析してみましょう。
(出典:経済産業省「個別スポーツの需要喚起策可能性調査」)
インドアとアウトドア、ゴルフ練習場の構成比は?
今度はインドアとアウトドア、それぞれのゴルフ練習場の構成比をみていきます。
公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟の2022年10月実態調査によると、全国のアウトドア練習場数が2,364か所(対前年比▲31件)と減少しているのに対し、インドアは1,322か所(前年対比+57件)と増加しています。
両者の構成比は、アウトドア:インドア=64%:36%となりますが、前年(2021年)の同調査によると対前年比件数で、アウトドア▲26、インドア+241となっており、インドア練習場の増加傾向が見て取れます。
(注)経済産業省の調査とは、手法などが異なることから、数値に違いがあります。
インドアゴルフ練習場に限れば市場は拡大傾向にある?
上記説明により、インドアゴルフにはマーケットが存在し、これからのニーズは高そうだ、と推定できます。
インドアゴルフ練習場と関連しますが、ゴルフシミュレーター設置の施設(ゴルフバー、総合遊戯施設など)も増加しています。
ただ、ゴルフシミュレーターは「ゴルフプレイそのもの」を室内で楽しむ設備なので、このレポートでは説明は省かせてもらいます。ご興味のある方は、別記事がありますので確認してみてください。
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インドアのゴルフレッスン(ティーチング)の市場規模・動向
株式会社ゴルフ経営研究所の「全国ゴルフ練習場経営調査結果」によると、ゴルフ練習場のうち86.3%でゴルフスクールを実施しています。
全国のゴルフ練習場数が約2,900ですから、スクールの数は全国で2,500か所あることになります。この数字から、ゴルフスクール・レッスンの需要は高いことが推定されます。
また、ライザップなど異業種からゴルフレッスンに参入するケースがみられます。さらに都心部駅チカでも「ゴルフレッスン」の看板、広告などをよく目にするようになったという事実からも、ゴルフレッスン需要の高さを裏付けています。
レッスンを受けるなら、インドア?アウトドア?
ゴルフレッスンに関して、いくつかの観点からインドアとアウトドアの比較をしてみます。
ロケーション
インドアのほうが、好立地のケースが多いです。また、天候や外気温にも左右されません。
レッスン時間
インドアのほうが、自由度が高いです。インドアの場合、営業時間=レッスン時間、のケースが大半です。アウトドアの場合は、レッスン時間が決められており、レッスンを受講するためには時間調整が必要です。
レッスンプロ(インストラクター)
アウトドアのほうがインストラクターの割合が多い、という説があります。アウトドアのほうが歴史があるので、そうかもしれません。しかし、教え方に差があるかというと、必ずしもそうではないですね。
打球を追えるか
インドアの場合は、打球の球筋が分かりません。もっとも、「打球確認用のマシン」が導入されたインドア施設なら、その点はクリアできます。しかし逆に、アウトドアは打球を目で追えるのでヘッドアップになりがち、ということもあるかもしれません。
アプローチやバンカー練習
コースレッスンであれば、アプローチやバンカーの練習が可能です。インドアであっても、疑似的にバンカー練習(砂のような感触のスポンジビーズ)や20から30ヤードのアプローチができるところもあります。
インドアゴルフに限らず、市場規模が経営に及ぼす影響は?
この章では、新規市場参入の場合の理論的な考え方について説明します。
市場規模とは
そもそも市場規模とは、一定期間に、ある事業分野において取引された金額や、販売された数量を指します。ひと言でいえば、「業界全体の総売上」ということになります。
そして市場規模は、新規事業の立ち上げや、新分野への進出のときに、どの程度の売上が見込まれるかを推定するのに使用します。
市場規模の変化をみることで、業界全体の需要が伸びているのか、縮小傾向にあるのかを知ることができます。
市場規模が拡大傾向にあれば、その分野に対する世の中の需要が伸びていることが分かるため、さらに投資を増やしたり、事業として進出したりすることを考慮します。
市場規模の調べ方
市場規模の調べ方は信頼度順に、1.官公庁が発行する資料データから、2.業界団体が発行する資料データから、・・・・となっています。
したがってこの記事のこれまでの分析は、経済産業省データ(官公庁)、全日本ゴルフ連盟・ゴルフ経営研究所データ(業界団体)を使用しており、「市場規模が十分ある」という強い裏付けになっています。
新規市場への参入パターン
新規市場に参入する場合のパターンには、次の4つがあります。
パターン | 詳細 |
---|---|
市場割込型 | 一般的な進出形態です。先行企業が開拓した市場へ新たに割り込んでいきます。 |
代替需要型 | 代替え需要型は、同一機能または、より高度な機能を持つ製品によって、先行企業を追い抜くタイプです。ウォークマン ⇒ iPodのような例です。 |
新規需要開発型 | 先発製品の代替ではなく、全く新たな製品によって潜在意識を顕在化して、進出するパターンです。最近では、ノンアルコールビール・ノンアルコールワインなどの例があります。 |
販売革新型 | 製品そのものではなく、販売方法による革新です。リアル店舗からインターネット販売への転換、などがあげられます。 |
インドアゴルフを新規実施するのは、「市場割込型」に該当します。
つまり、アウトドア(先行企業)が開拓したマーケットを、インドアが割り込んでいくイメージです。インドアとアウトドアで、今後一定の住み分けはするのでしょうが、広大な土地と巨大な施設が必要な「アウトドア練習場」の割合は、徐々に少なくなっていくかもしれません。
今ゴルフビジネスを始めるなら、インドアゴルフスクールの経営が有力候補!
冒頭にも述べましたが、コロナ禍により最近のゴルフ人口は増加しているようです。特に、20~30代、および女性の増加が顕著だとされています。
ゴルフ人口に関してはコロナ以前はしばらく「低減傾向」にあったことから、各種関連ビジネスも元気がありませんでした。
今回はこの「プチ ゴルフブーム」を奇貨として、ゴルフ業界に一歩踏み出すのが良策のような気がします。そして、記事内でも触れたように、いまインドアゴルフスクールにマーケットがありそうです。
ゴルフ業界に興味をお持ちの方、現業が不振で何か対策を打ちたいと考えている方、そのほかの方も、今がチャンスです。
さあ、勇気をもってインドアゴルフという有望市場に踏み出しましょう。インドアゴルフはあなたにとっての「ブルーオーシャン」です。