フランチャイズに加盟する対価として、通常は「加盟金の支払い」が発生します。
今回は、そのフランチャイズ加盟金の意味や額、会計処理について解説します。これを読めばフランチャイズ経営の疑問点が一つ解決し、一歩前進できると思います。
フランチャイズ加盟金とは?
フランチャイズ加盟金とは、フランチャイズに加盟するときにその本部へ支払うお金です。このお金は、フランチャイズ本部から提供される「運営のノウハウやサポート、ブランドや商品」の使用の見返りと考えられています。
加盟時に一時金として支払うのが原則ですが、分割払いにしてくれる本部もあります。
また加盟金は、契約解除の場合でも返金されません。
保証金との違いは
加盟時の一時金として、加盟金のほかに保証金を支払う場合があります。これは加盟の際に本部に預ける「預け金」にあたります。
フランチャイズ加盟後は、原則として毎月「ロイヤリティ」を本部に支払う必要がありますが、その支払いが滞った場合、保証金から充当されます。預り金ですから契約解除の時に保証金に残高があれば、返却されることになります。
その他加盟時の一時金について
以下の費用について支払いが発生するケースがあります。
研修費
フランチャイズ本部が行う「研修やセミナー」に参加する費用です。開業前研修は必ず参加して、業務のやり方を身につけることから、支払いも必須です。
設備費
本部が指定する設備や備品を購入する費用です。
広告宣伝費
本部が行う広告費用を、分担して負担するものです。
フランチャイズ加盟金なし、もしくは返金されるケースもある?
「フランチャイズ加盟金なし」をうたう本部があるようですが、そもそもなぜ加盟金ゼロで運営が成り立つのでしょうか。何か「罠」はないのでしょうか。
なお、加盟金の実際の額は次章で触れていきます。
加盟金なしのフランチャイズ
独立開業を支援サイトで検索すると、加盟金ゼロの本部が数十件ヒットします。
業種は、中古品買取、住宅の定期点検、揚げ立て天ぷら、光回線代理店、リラクゼーションサロンなど多岐にわたります。
加盟金ゼロのビジネスモデル
一般的に加盟金ゼロのフランチャイズでは、以下のケースが考えられます。
- ほかの一時金が発生する
- ステルス フランチャイズ
ほかの一時金が発生する
この手のフランチャイズでは、前述の研修費、設備費、広告宣伝費以外に、ほかの費用との違いがよくわからない、「施設利用料、名義使用料、契約料など」の費用が発生するケースもあります。
なかには、事前に説明のなかった「よくわからない費用」を請求する「悪徳本部」もあるようです。
ステルス フランチャイズ
ステルスとは隠密という意味です。このフランチャイズには決まったブランド名はありません(オーナーが自由に決定します)。また開業後の経営指導も行いません。
このフランチャイズでは開業までのサポートを行い、「プロデュース料」「コンサルティング料」を加盟金の代わりに受け取ります。
経済の原則として加盟金ゼロ(=本部の収入が少ない)ということは、「別の部分で徴求して埋め合わせている」「サポートなどの本部負荷が少ない」、この2つのうちいずれかになるでしょう。
加盟金が返金されるケース
加盟金は、基本的に戻ってこないものです。実際多くの契約書で、「いかなる場合も、いかなる理由でも返還しない」(加盟金不返還特約)と記載されています。
またクーリングオフ制度も、適用になりません。クーリングオフは事業者と消費者の契約の場合に適用になる制度で、加盟店契約では「事業者同士」になるため、不適用なのです。
ごく例外的に返却されたケースがありました。ご紹介します。
- 本部の都合で事業が中止になり、加盟店の営業継続が困難となったケース
- 加盟金支払い直後、事前研修前に本部が契約を解除したケース
- 売上予測等に関し、明らかな説明義務違反があったケース
上記のように、いずれも「本部側に非があった」場合です。したがってオーナーの意向で加盟金が返ってくる場合はない、と考えましょう。
【業種別】フランチャイズ加盟金一覧
少し古い資料ですが、経済産業省「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」(H20)によると、業態別加盟金は以下のとおりです。
- 小売業 196万円
- 外食業 183万円
- サービス業 191万円
つぎに業種別加盟金です。業種別に開業資金を調査し、その上位5社の平均値を算出しました。
業種 | 平均開業資金 | 事業例 |
---|---|---|
代理店業 | 53万円 | 水素吸入器設置、補助金・助成金の提案、社会保険削減、お問い合わせフォーム営業 |
教育・保険業 | 484万円 | 学習塾、スポーツ教室、幼児教育 |
飲食・菓子業 | 286万円 | クレープ移動販売、ゴーストレストラン、からあげ、カフェ・居酒屋 |
サービス業 | 255万円 | 障害者グループホーム、結婚相談、在宅マッサージ |
無店舗系 | 160万円 | ハウスクリーニング、各種修理、リフォーム |
小売業 | 181万円 | 中古品等買取、寿司・弁当販売、シューズサロン |
フランチャイズ加盟金の会計処理はどうなる?
フランチャイズ加盟金の税法上の考え方は、以下のとおりです(国税庁見解)。
上記見解を前提として、「加盟金を支出した場合」および「毎年の決算時期」における会計処理について説明します。支出額20万円以上と未満で、処理方法が異なります。
加盟店の処理1-加盟金20万円以上の場合
20万円以上の場合は繰延資産として計上し、複数年で償却することになります。当該年度に一括して経費計上することはできません。
<加盟金支出時の仕分け>(前提条件:加盟金300万円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期前払費用 | 3,000,000円 | 現預金 | 3,000,000円 |
現金、または預金から支払い、長期前払費用で処理しておきます。
<決算時の仕分け>
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期前払費用償却 | 600,000円 | 長期前払費用 | 600,000円 |
支払い時に300万円計上した「長期前払費用」のうちから、その5分の1(この場合は60万円)を当該年度の経費に回す、という考え方です。
5分の1というのは「加盟金の償却期間は5年」とされているからで、つまり「5年にわたり均等に経費に振り替えていく」ということになります。
加盟店の処理2-加盟金20万円未満の場合
<加盟金支出時の仕分け>(前提条件:加盟金15万円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 150,000円 | 現預金 | 150,000円 |
(注)繰延資産は、支出金額が20万円未満の場合、全額を当該年度に経費とすることが認められています。したがって仕分けはこの1回きりで、決算時の特別な処理は必要ありません。
フランチャイズ本部の会計処理
フランチャイズ本部が加盟金を受け取った場合の会計処理です。
事業全体における加盟金の割合にもよるのですが、割合が多い場合は営業収入、小さい場合は雑収入になると思われます。
フランチャイズ加盟は、加盟金だけでなくビジネスの全体感で判断しよう
ここまでフランチャイズ加盟金について、説明してきました。フランチャイズ加盟金の割合は結構大きいと感じられたと思います。
しかし文中でも触れたように、加盟金がほかの経費に姿を変えているケースもあり、加盟金の多寡だけで考えるのは危険です。
フランチャイズ加盟にあたり、加盟金以外にどんな費用が掛かるのか、開業してからランニングコストとしてどんなロイヤリティ以外の費用がいくらかかるのか、フランチャイズ本部との契約項目に不足項目や不利項目はないのか、など確認すべき項目は山積みです。
うんざりするのかもしれませんが、ここがまさに成功への境目です。ここを手抜きして失敗したオーナーがたくさんいます。
まずは加盟金だけでなくビジネス全体で考えるとともに、事前の徹底的なリサーチを行うことをおすすめします。積極的に「資料請求」「問い合わせ」を行いましょう。