ゴルフにはさまざまなスイング理論が存在します。
スイング理論の多くは、「〇〇の場合は……」のように、各々のスイングの特徴に合わせた前提が敷かれており、正しく読み解くには一定の経験が必要です。
その前提となるスイングの特徴を4つのタイプにまとめた理論が、4スタンス理論です。
この記事では、4スタンス理論をテーマに解説します。
4スタンス理論とは
4スタンス理論とは、整体師で元格闘家の廣戸聡一氏が創案した身体理論です。
体の動かし方や重心位置など、先天的に動かしやすいパターンがあるという考え方のもと、自然な立位姿勢(スタンス)によって診断できることや、4つのタイプに分けられることから、4スタンス理論といわれています。
具体的には、リラックスして立った姿勢で、重心の位置がつま先よりであれば「A」、かかとよりであれば「B」。重心が内もも側であれば「1」、外側であれば「2」に分けられ、その組み合わせで「A1」「A2」「B1」「B2」の4つのパターンに分類されます。
プロゴルファーの多くも4スタンス理論で分類されているので、スイングに悩みを抱えている方は、自身と同じタイプのプロゴルファーのスイングを参考にすることで、解決策が見つかるかもしれません。
4スタンス理論は間違い?科学的根拠はある?
4スタンス理論は、人の動作特性が分かりやすい形で体系化されており、さまざまなスポーツで取り入れられていますが、科学的な根拠は不明です。
ただ、4スタンス理論を創案した廣戸氏は日本オリンピック委員会の強化スタッフに名を連ねており、五輪選手の強化育成に採用されていることを考えると、信じている人が多い理論だという点もうなずけます。
ゴルフ業界では、2013年に日本ゴルフツアー機構(JGTO)が主催する若手プロを対象とした強化合宿で「4スタンス理論」が採用されたことや、横田真一プロが、4スタンス理論を取り入れたことで10数年ぶりにツアー優勝を飾ったことなどから、ゴルフ業界でも成果が期待できる理論だと考えられています。
一人でできる4スタンス理論の診断方法
4スタンス理論のタイプは、3種類の動作チェックで診断できます。
それぞれの動作を行う際の「楽に感じられる動き」をチェックするので、動きやすい服装で、体の力を抜いてリラックスした状態で取り組んでみてくださいね。
重心の前後(AかB)の確認
まずは重心の前後、AかBかを診断します。
つり革を持つときの手の形で判断します。
チェック方法 | つり革を持つときの手の形 |
---|---|
Aタイプ | 指先で引っ掛けるようにつり革を持つタイプ |
Bタイプ | 手のひら全体で持つタイプ |
重心の前後を判別するABタイプは比較的分かりやすいですが、より正確に判別を試みたい場合は、以下の方法を試しましょう。
チェック方法 | 腕を上にあげた状態から肩の位置で腕を組むか、腕を下から持ち上げてお腹周りで腕を組むか |
---|---|
Aタイプ | 腕を上にあげた状態から肩の位置で腕を組んだほうが体を回しやすい方 |
Bタイプ | 腕を下から持ち上げてお腹の辺りで腕を組んだほうが体を回しやすい方 |
2つの診断でタイプが異なったり、判断しにくかったりする場合は次の方法も試してみましょう。
チェック方法 | 腕を開いて体を回したときに、肩の高さまで水平に腕を上げたほうが回しやすいか、斜め45度に腕を上げたほうが回しやすいか |
---|---|
Aタイプ | 肩の高さまで腕を上げたほうが体を回しやすい方 |
Bタイプ | 腕を上げる角度が、斜め45度のほうが回しやすい方 |
重心の内外(1か2)の確認
次に重心の内外、1か2かを診断します。
チェック方法 | コップを持つときの指の使い方 |
---|---|
Aタイプ | 人差し指と中指を中心にコップを持つ方 |
Bタイプ | 中指と薬指を中心にコップを持つ方 |
正確に判断するために次のチェックも行ってみましょう。
チェック方法 | 体の正面で腕を左右に振る動作をする際、手のひらを外側に向けるか、手のひらを内側に向けるか |
---|---|
Aタイプ | 手のひらを外側に向けたほうが左右に振りやすい方 |
Bタイプ | 手のひらを内側に向けたほうが左右に振りやすい方 |
2つの診断でタイプが異なったり、判断しにくかったりする場合は次の方法も試してみましょう。
チェック方法 | 両手のひらを胸の前で合わせて上半身だけを回す際、両足の小指(外側)を浮かせるか、両足の親指(内側)を浮かせるか |
---|---|
Aタイプ | 両足の小指側を浮かせたほうが上半身を回しやすい方 |
Bタイプ | 両足の親指側を浮かせたほうが上半身を回しやすい方 |
いずれのチェック方法も、脱力したときと、あえて大きく振ったり回したりしたときの、両方を試してみてくださいね。
クロスタイプとパラレルタイプの確認
4スタンス理論のタイプには、以下の2つがあります。
クロスタイプ A1.B2 | 重心を交差させて使うタイプで、左から右、右から左へと軸を動かす動作感覚を持つタイプ |
パラレルタイプ A2.B1 | 重心を移動させず、軸をその場で回転させる動作感覚を持つタイプ |
クロスタイプとパラレルタイプの違いは、重心の前後・内外以上に細かい感覚の差といわれているため、「自分はA1だからクロスタイプだろう……」といった先入観があると診断を誤る可能性があります。
よって、これまでの診断結果は一度脳内でリセットしてから行いましょう。
2つのタイプのチェック方法と診断結果は、以下の2つです。
チェック方法 | クロスタイプの特徴 | パラレルタイプの特徴 |
---|---|---|
腕の力を抜いて肩を上下に動かし、手首の曲がる方向を確認する | 肩を下げるときに手首が内側に曲がる人 | 肩を下げるときに手首が外側に曲がる人 |
右手を体の正面に水平に伸ばし、右手に向かって上げやすい足を確認する | 左足のほうが上げやすい | 右足のほうが上げやすい |
A1・B2の方はクロスタイプ、A2・B1の方はパラレルタイプに分類されるため、A1だけどパラレルタイプという診断結果が出た場合は、どこかの診断が誤っていることになります。
特に重心の内外である1と2、クロスとパラレルは、わずかな差しか出ないことも。結果が揃うまで診断を繰り返してみてくださいね。
自分のスイングに合うスイング理論を正しく学ぶなら「ステップゴルフ」
ゴルフの4スタンス理論「A1タイプ」の特徴
ここでは、重心がつま先寄りで親指側にある、A1タイプの特徴とクラブセッティング、おすすめの練習方法を解説します。
A1タイプのスイングの特徴
A1タイプのスイングは、アドレス時に左サイドにある体重を、バックスイングからトップにかけて右足に移動し、インパクトからフォローにかけて左足へ体重移動をする、いわゆる2軸のスイングです。
2軸のスイングはフォローサイドで引く力を出しやすいため、インパクトからフォローにかけてストレート軌道になりやすいタイプ。
グリップは指で握るフィンガータイプが多く、人差し指から手のひらにかけて斜めになるように握るのが特徴です。また、AIタイプは、インパクトは左足の前で捉える傾向にあります。
A1タイプのクラブセッティング
2軸のスイングが特徴的なA1タイプは、打ち込むよりも横から払い打つスイング軌道になりやすいタイプです。
払い打つスイング軌道は、ドライバーで打ったときにアッパー軌道になりやすいため、構えやすさを重視してクラブを選択しましょう。
また、A1タイプの人がアイアンでスイングするとロフトが開きやすくなります。
ロフト通りのスイングに変えるよりも、ストロングロフトのアイアンを選択することで、自然なスイングを身に付けることができます。
A1タイプのゴルフ練習方法
A1タイプはフォロースルーがストレート軌道になりやすいため、真っすぐ引いて・真っすぐ打つイメージで練習しましょう。
その際に注意したいのは「左ひざの動き」です。
インパクトが左足前になりやすいので、左ひざが大きく動くとインパクトでもブレが生じます。
左ひざの動きを抑えることで左サイドの軸が固定され、スイングが安定するでしょう。
【一覧】A1タイプのプロゴルファー・女子プロゴルファー
A1タイプだといわれているプロゴルファーは以下のとおりです。
- ジャスティン・トーマス
- アダム・スコット
- ザンダー・シャウフェレ
- キャメロン・チャンプ
- 松山英樹
- 石川遼
- 片山晋呉
- 上田桃子
- 鈴木愛
- 木戸愛
4スタンス理論「A2タイプ」の特徴
重心がつま先寄りで小指側にある、A2タイプの特徴とクラブセッティング、おすすめの練習方法を解説します。
A2タイプのスイングの特徴
A2タイプのスイングは、背骨を中心にアドレス時の形のまま回転する1軸の打ち方です。横移動がないため、クラブが鋭角に入りやすいスイングです。
体重移動のイメージではなく、その場でくるっと回転して打つため、フォローにかけて体ごと回転します。
グリップは4本指のつけ根に一直線に握るフィンガーグリップが多く、左足の前で鋭角にクラブが降りる特徴があります。
A2タイプのクラブセッティング
鋭角にクラブを動かすA2タイプは、自然とダウンブローを打てきるスイングです。そのため、流行りの低重心ドライバーと相性がよいといえます。
アイアンについては、飛距離の出るようなストロングロフトや低重心クラブでは、飛距離がバラつきやすくなるため、飛距離よりも方向性を重視したものがマッチしています。
A2タイプのゴルフ練習方法
A2タイプは重心が外側にあるため、無意識に体重移動ができます。
練習では「回転」を意識しましょう。
アドレスで背中の軸を意識し、その軸を中心にコマのように回転するイメージです。
軸を中心に腕やクラブが体に巻き付いてくる感覚があればバッチリです。
【一覧】A2タイプのプロゴルファー・女子プロゴルファー
A2タイプだといわれているプロゴルファーは以下のとおりです。
- タイガー・ウッズ
- ジャスティン・ローズ
- ブルックス・ケプカ
- ダスティン・ジョンソン
- 宮里優作
- 中嶋常幸
- 伊沢利光
- 東尾理子
- 宮里藍
4スタンス理論「B1タイプ」の特徴
続いて、重心がかかと寄りで体の内側にある、B1タイプの特徴やクラブセッティング方法を解説します。
B1タイプのスイングの特徴
A2タイプと同様の1軸タイプのスイングで、インパクトに向けて鋭角にクラブが降りる特徴があります。
A2タイプと異なるのはスイング軌道。
かかと寄りの重心になるB1タイプは、Aタイプと比較して前傾幅が小さい特徴があります。
そのため、切り返しからクラブがアウトサイド気味になり、インパクト後にストレートに抜けていきます。
B1にはインパクトで最大の力を使い、フォローはその延長というイメージです。
B1タイプのクラブセッティング
ダウンブローのスイングとなるB1タイプでは、A2タイプと同様のセッティングが合います。
ドライバーは低重心タイプ、アイアンは方向性重視のセッティングを選択しましょう。
B1タイプのゴルフ練習方法
B1タイプは股関節と首の付け根を動かさないように練習しましょう。
多くのレッスン書では体重移動やクラブの軌道について書かれていますが、その場でくるっと回転するB1タイプのスイングは、軸をブレさせないことが重要です。
上半身の軸を首、下半身の軸を腰にイメージすることで、スイングが安定します。
【一覧】B1タイプのプロゴルファー・女子プロゴルファー
B1タイプだといわれているプロゴルファーは以下のとおりです。
- ジョン・ラーム
- パトリック・リード
- セルヒオ・ガルシア
- フランチェスコ・モリナリ
- 横田真一
- 深堀圭一郎
- 藤田寛之
- 有村智恵
- 馬場ゆかり
- 原江里菜
4スタンス理論「B2タイプ」の特徴
重心がかかと寄りで体の外側にある、B2タイプについて解説します。
B2タイプのスイングの特徴
A1タイプと同じ2軸タイプのB1タイプは、体重移動を積極的に行うことでインパクトゾーンが長くなり、インサイドアウトにクラブが降りる特徴があります。
また、インパクトで力を使うB2タイプでは「ボールを押し込む」イメージを持つ方が多い傾向にあります。
右サイド重心でインパクトを迎えるため、フィニッシュはコンパクトになります。
B2タイプのクラブセッティング
払い打つ軌道のスイングとなるB2タイプは、A1タイプと同様のセッティングが合います。
ドライバーは構えやすさ重視で選び、アイアンはストロングロフトのセッティングを選択しましょう。
B2タイプのゴルフ練習方法
B2タイプは、スイングアークの大きいダイナミックなスイングです。
練習では、腰→肩→腕→手首→クラブの順に動かすことを意識しましょう。
ただし、B1同様に軸をブレさせないよう注意が必要です。
首と股関節を軸に、ボールとの距離を一定に保ちながら練習するとスイングが安定します。
【一覧】B2タイプのプロゴルファー・女子プロゴルファー
B2タイプだといわれているプロゴルファーは以下のとおりです。
- リッキー・ファウラー
- ジェイソン・デイ
- バッバ・ワトソン
- フィル・ミケルソン
- 池田勇太
- 尾崎将司
- 宮本勝昌
- 横峯さくら
- 諸見里しのぶ
- 樋口久子
理論に基づいたゴルフを学びたい方は、ゴルフスクールが最適◎
4スタンス理論は、それぞれのタイプに合った練習法を選択することで、最短で上達できる優れた理論だといえます。
ただ、タイプに合った練習をしていても、上達には順序があり、一足飛びでプロのようなきれいなスイングが身に付くわけではありません。
また、診断を誤るとスイングが崩れてしまうこともあるため、思い込みによるタイプ診断も避ける必要があります。
個別診断で正しく診断できているか不安な方には、レッスンの受講がおすすめです。
スクールでは正しい診断に加え、その後の練習メニューをしっかり組み立てるため、最短で上達できるでしょう。
特にステップゴルフでは、一人ひとりにオーダーメイドのカルテが作られ、各々の課題や目標に合わせて丁寧なティーチングが受けられます。
レッスンの様子は無料の体験レッスンで体感できるので、ぜひ試してみてくださいね。