掌屈(しょうくつ)とは手首の使い方のことで、手首をひら側に折る動作のことを指します。
この記事では、掌屈の基本となる考え方や、掌屈で打つことのメリット・デメリット、練習ドリルについて解説します。
ゴルフの掌屈とは?背屈との違い
掌屈とは、テークバックからインパクトにかけて、右打ちの場合、左手の甲を地面に曲げることでフェースを閉じる動きのことをいいます。
掌屈により、フェースは閉じた状態でスイングするため、スライスで悩んでいるゴルファーにとって覚えておきたいテクニックのひとつといわれています。
パーシモン(ヘッドに使われてきた木材)や小ぶりなヘッドが主流だったときは、テークバックからバックスイングにかけてフェースを開き、切り返しからインパクトにかけてフェースを閉じる、フェースローテーションを積極的に使うことが推奨されていました。
しかし、最近ではクラブヘッドが大型化し、フェースローテーションを使うよりもフェース面の開閉を抑えるスイングが主流となったことで、掌屈が注目されるようになりました。
掌屈に似た言葉に背屈(はいくつ)があります。背屈は、インパクトで左手の甲が空を向くことです。
掌屈と背屈それぞれの特徴と相性の良いグリップ
ここでは、フェース動作と球筋の特徴、グリップとの相性について解説します。
掌屈の特徴と相性の良いグリップ
掌屈はフェースを閉じたままスイングできるため、ボールが吹きあがったりスライスの球が多くでるタイプに有効です。
フェース面が閉じているため球筋は低くなり、ストレートからフック傾向の強い弾道になることが特徴です。
相性の良いグリップは、スクエアからウィークグリップ。
アドレス時に掌屈すると分かりやすいですが、左手の甲を地面側に向けるとフェース面も同調して地面側に向きます。
ただし、フックグリップの方が掌屈を行うと、閉じる幅がより大きくなり、フックやチーピンが強くでることになります。
もちろん、掌屈の程度やインパクト後のアームローテーションを抑えることで、フックグリップでも掌屈は有効になりえますが、強いフックグリップの場合はミスが多くなる可能性が高くなるので注意しましょう。
背屈の特徴と相性の良いグリップ
背屈でスイングすると、左手首が空を向き、フェースを閉じる動作が抑えられるため、フックに悩んでいるタイプに有効です。
フェースがフラットから開いた状態になるため、高弾道でスライス傾向の弾道になります。
相性の良いグリップは、フックグリップ。
フックグリップの方であれば、アドレス時に体の中心から左足のつけ根にグリップエンドを持ってくると、自然と背屈する形を作ることができます。
ただし、スクエアからウィークグリップの方が背屈を行うと、開き気味のフェースをさらに開くことになるため、右に大きく曲がるミスが多くなります。
まずは自分のグリップがどのタイプかを把握したうえで、掌屈を試してみるのか、背屈を試してみるのか考えてみましょう。
掌屈のメリット・デメリット
掌屈をマスターすると、スイングをシンプルにすることができるうえに、強い弾道を手に入れることができます。
ここでは、掌屈によるメリットとデメリットを解説します。
メリット
掌屈により得られるメリットを4つ紹介します。
打感(つかまり)が良くなる
インパクトで掌屈の動作を取り入れると、掌屈した角度の分インパクトでフェースが閉じることになります。
これにより、掌屈していない時よりも厚いインパクトとなり、打感が良くなります。
スイングの再現性が高くなる
掌屈を取り入れることにより、テークバックからインパクトまでの手首の動きが固定されます。
フェースローテーションを使ってスイングすると、どうしてもローテーションのタイミングでスイング軌道が変わってしまいますが、掌屈により固定されたローテーションによりスイング軌道が毎回同じになり、スイングが安定します。
自然とハンドファーストが身につく
強い球筋に不可欠なのが、ハンドファーストです。
掌屈の動作により、インパクトの形は自然とハンドファーストになります。
ハンドファーストと安定したスイング軌道により入射角が安定し、急にダフったりトップしたりといったミスを減らすことができます。
ゴルフをシンプルにすることができる
掌屈を取り入れることにより、手や腕の動きを意識する必要がなくなります。
また、低い弾道でスピン量も抑えられるため、曲がる大きさや方向が一定になります。
スイングと球筋が安定するため、ラウンド時のさまざまなシチュエーションに対して、攻略法をシンプルに考えることができるでしょう。
デメリット
掌屈によるデメリットを2つ紹介します。
手打ちになりやすい
掌屈を意識すると、手首に力が入りやすくなるためバックスイングが浅くなることがあります。
バックスイングが浅くなると、切り返しからスイング軌道がアウトサイドインになりやすく、そのまま打ってしまうとひっかけやフックになるため、インパクトまで掌屈が維持できなくなります。
スイングのクセによって掌屈を始めるタイミングは異なるため、体を回すことを意識しながら、最適な掌屈のタイミングを見つけましょう。
プッシュアウトがでる
払い打ちの方は、手首をひら側に曲げるイメージだけだと、手の甲が体の正面(前)になることがあります。
手の甲が体の正面にくると、フェースが右を向いてしまいプッシュの球筋になります。
掌屈によりフェースを閉じているはずなのに球が右に飛び出る方は、甲の向きを正面(前)から地面(下)にしましょう。
あえてスイングで掌屈しないのもあり?
すでに球筋が安定している場合、掌屈や背屈を意識する必要はありません。
それぞれの動作に相性の良いグリップを紹介しましたが、フックグリップで、球筋が低くドロー回転で安定している方は、自然と掌屈ができている場合があります。
自然と掌屈ができているなかで意識的に掌屈を使うと、球がさらに低くなったり、フックが強くなったりします。
球の高さが安定していない場合やスライスによるミスが多い場合は、掌屈を取り入れてみてくださいね。
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ゴルフスイングにおける掌屈のコツ
掌屈の動作を正しく行うためのコツを3つ解説します。
掌屈を始めるタイミング
掌屈の状態でインパクトを迎えるためには、少なくともトップスイングから掌屈の状態でスイングする必要があります。
トップスイングまでに掌屈を完成させるためには、バックスイングから徐々に掌屈の形を作る必要があります。
早すぎる掌屈だと手打ちになりやすいため、テークバックからシャフトが地面と平行になるまでは体を回し、腰の位置からトップにかけて徐々に掌屈しましょう。
トップのフェースの向き
掌屈が正しくできているか、最も判断しやすいポイントがトップの形です。
トップで掌屈が完了している状態とは、左手の甲が空を向いている状態です。
それに同調してフェース面も空を向くため、掌屈を練習するときはトップの形をチェックしましょう。
掌屈したままインパクト
トップで掌屈動作が完了していれば、左手の甲が地面を向くイメージのまま切り返すことで、掌屈状態でインパクトすることができます。
このとき、前傾が崩れてしまったり、手の甲が正面を向いたりするとクラブが開いてしまうため、トップからインパクトにかけて掌屈動作を崩さないようにしましょう。
ドライバーとアイアンで掌屈のやり方は異なる?
基本的に掌屈のやり方は、すべてのクラブにおいて同じです。ただし、インパクト後のフォロースルーで、意識しなければならない点があります。
ドライバーショットで意識すべき点
ドライバーショットで意識すべき点は、ボールの位置をスイングの最下点付近に置くことです。
アイアンよりも左足寄りにボールをセットするドライバーについては、アッパー軌道で打つイメージの方が多いと思います。
掌屈でアッパー軌道を意識すると、手首が背屈の方向に曲がりやすくなります。
しっかりと掌屈で打つために、ボール位置はスイングの最下点付近を意識しましょう。
アイアンショットで意識すべき点
アイアンショットで意識すべき点は、以下の2つです。
- スイング軌道はインサイドアウト
- 打ち込みを意識しすぎない
ドライバーよりも体の中にボールがあるアイアンでは、掌屈を意識しすぎることで力が入り、アウトサイドイン軌道になってしまったり、地面に手の甲を向ける意識を強く持つあまり、入射角が鋭角になったりします。
掌屈の動作ができていれば、スイング軌道や入射角は勝手に安定してくるため、切り返しから力まないように注意しましょう。
【FAQ】ゴルフの掌屈に関するよくある質問
デメリットよりもメリットの多い掌屈ですが、実践に向けてよくある質問を2つ紹介します。
掌屈ができないのには理由がある?
フェースローテーションが多い方やフックグリップの方は、掌屈と相性が悪いと解説しましたが、うまくいかない要素がもう1つあります。
それは、体で回転するイメージができないことです。
トップで掌屈の状態を作った後、掌屈の状態のまま体を回してインパクトすることが重要ですが、腕の力が強かったり、手で振ったりしている方は掌屈を維持することができません。
フェースローテーションを抑え、グリップを改善し、トップから体の回転で打つことを意識して練習しましょう。
掌屈しようとすると痛みがでるのはなぜ?
掌屈しようとして起こる手首の痛みは、掌屈により大きく曲げた手首を、インパクトまで我慢することで手首に負荷がかかったり、ダフったりすることによることが原因とされています。
いずれの場合も、極端にスイングを変えようとしたときに起こりやすい痛みのため、スイングを改善するときには無理をしないことや、手首のストレッチを十分にすることを意識しましょう。
ゴルフの掌屈の練習におすすめなドリル
掌屈を身につけるための練習方法を解説します。
右手を1グリップ分離してローテーション抑える
この方法はスプリットハンドと呼ばれるこのグリップで「右腕が返さない」ことを意識して練習します。
掌屈では、フェースローテーションは不要とされています。
ローテーションの操作の多くは右手が関与するため、あえて両手を離すことで右グリップの意識を強く持たせます。
この練習で右腕を返さないことができると、フェースローテーションを抑えたスイングが身につきます。
ハーフスイングで体の回転でボールを打つ
フェースローテーションを抑えたら、掌屈の状態のまま体で打つ練習を行います。
フルスイングまでクラブを上げてしまうと手打ちが許容されてしまうため、バックスイングは2時から3時、フォロースルーは9時から10時までを意識するのがポイントです。
低弾道で強い球筋が身につくまで、繰り返し練習しましょう。
掌屈が身につく練習器具
掌屈を身につけるために有効な練習器具を2つ紹介します。
SHOQ2 MAGIC(ショークツマジック)
グリップがついたシャフトの下側にもう1本、スポンジがついたシャフトが連結している練習器具です。
使い方は簡単で、グリップのついたシャフトをスイングし、トップで右手首、フォローで左手首をスポンジに触れるように振るだけです。
難しい動きはなく、スポンジに手首をつけるだけの動きで掌屈のイメージをつかめます。
The Hanger(ザハンガー)
この練習器具は、アドレス時に、グリップに垂直(0時)ではなく、時計の2時頃の方向に傾けて装着して使います。
アドレス時は左右どちらの腕にも接触していませんが、テークバックで腰の高さまでクラブを上げたときに左腕に触れ、ザハンガーが左腕に触れたままの状態でスイングします。
ショークツマジック同様、シンプルな動きで掌屈のイメージをつかむことができます。
正しい掌屈を身につけるならゴルフスクールで学ぶのが近道!
掌屈は、正しく身につけることで大きく球筋を向上させられる技術です。特に、長年スライスで悩んでいる方には抜本的な改善が期待できるでしょう。
ただし、掌屈は手首の動きと捉えられがちで、スイング軌道や入射角といった体の動きがおざなりになってしまっては意味がありません。
正しい掌屈を学ぶには、掌屈の動きに連動した体の動きを学ぶことが重要です。しかし、独学での習得は難しい場合も。
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