ゴルフの「止まっているボールをクラブで打つ」という簡単そうにみえるスイングの動作において、体重移動はショットの安定と飛距離アップの両方に欠かせない重要なモーションです。
なぜゴルフで体重移動がポイントになのか、その理由やメカニズム、体重移動が上手くなるコツ、練習方法について解説していきます。
ゴルフのスイングに体重移動は必要?
綺麗なスイングには自然と体重移動が伴うものです。とはいえ、シチュエーションによっては体重移動が不要、もしくは体重移動してはいけないケースもあるので、ここで要点をつかんでおきましょう。
体重移動をしないとどうなる?
ゴルフスイングの基本は身体の捻りです。捻りが大きいほどヘッドスピードが上がります。両足を着けてスイングすると楽に捻れますが、足を開けば開くほどそのままの姿勢でスイングするのが難しいことに気づくのではないでしょうか。
つまり、足の開き(スタンス)をある程度広くとったときに体重移動をしないと、身体の捻りが小さくなります。逆に、両足を開いた状態で大きなスイングをしようとすると、左右どちらかの足がおのずと軸になり、この軸足が自然な体重移動を生むのです。
体重移動が不要という人もいる?
ゴルフスイングは奥が深いもので、プレーしている間に色々アドバイスされるとむしろスイングを崩したりする方もいます。そういった方にとっては体重移動も「そんなものは不要」であり「ゴルフは身体の回転で打つもの」という意見もあります。
それ自体は正しい理論ですが、もっと正確に言うのなら「意識せず体の回転(捻り)で打っていれば、スイングの前半では右足、インパクトを含めたスイングの後半は左足に、自然と体重が乗っている」ということです。スイングにおいて体重移動を意識することはスイングを崩す原因にもなり得るので、ひたすら練習して感覚をつかむのも近道のひとつといえるでしょう。
また、実際のコース上では必ずしも平たんな場所で打つとは限らないので、シチュエーションを限定すれば、体重移動が不要な場合もあります。つま先上がりやつま先下がり、左足上がりや右足上がりなどさまざまなケースがあり、打ちづらい場所では大きなスイングや体重移動は逆に正確なショットの邪魔になってしまうこともあります。アプローチショットやパッティングにおいても、フルショットが必要なければ体重移動も必要ないということになります。
参考:体重移動とスウェーの違い
体重移動を意識するあまりアマチュアゴルファーが陥りやすいのが、スウェーという状態です。スウェーとは、スイング時に体の軸が左右に流れてしまうこと。場合によってはミスショットを起こす原因になります。
体重移動とスウェーの違いは何なのでしょうか。
違いはスイングの様子を見れば一目瞭然です。軸がぶれずに打っている綺麗なスイングに比べ、スウェーしているスイングでは身体全体(特に上半身)がテークバックでは右に、インパクトにかけては左に突っ込むように流れてしまいます。
軸が左右に動いてしまうのでドライバーは芯を外し、アイアンではダフリやすくなってしまいます。また、スライスやフックの原因にもなりやすいので、ゴルファーの大きな敵といえる現象です。
ゴルフの体重移動のコツは?
ゴルフのスイングの中にはいろいろな動作が含まれていて、それぞれを3次元でとらえる必要があります。体重移動でも同じことがいえます。
体重移動を意識しすぎるとスイングを乱す元になりますが、全く意識しないのもゴルフ上達の阻害要因になってしまうので、正しい体重移動について考えてみましょう。
体重の配分(移動範囲)を意識する
スイングの体重移動は、どれくらい左右の足にかけていくものなのでしょうか。
配分としては、バックスイングに入りながら右足に体重をのせ、トップに入るころには約70%の体重を右足へ、今度はダインスイングからフォローにかけて左足に体重を移し、インパクトの瞬間は約70%の体重が左足にのっているのが標準的な体重移動であるといわれます。
結果的には、最後のフォロー時に約90%の体重が左足にのっている状態になります。
また、腰の移動範囲は狭くする意識が必要です。イメージとしてはその場で腰が回転する感じです。ただ、全く腰を動かさないと身体の捻りに無理が生じるので、そうならないための移動範囲に留めましょう。
もちろん、スイング中の体重の配分や腰の移動範囲を意識するのは練習中だけのことで、コース上で無理に意識する必要はありません。
左足に体重を乗せるタイミングを意識する
振り出したバックスイングからインパクトに至る過程の、どこで左足に体重を移していけばよいのか、一瞬のことですが悩むところではないでしょうか。
この悩みがある方は、「ゴルフのスイングは下半身主導でするもの」という基本に立ち返り、トップが決まるか決まらないかくらいのタイミングで左足へ体重を移していくことを意識してみてはいかがでしょうか。
スイングの動作の中で、最終的には左足が軸となって回転しながらボールをとらえるので、左足に体重をのせながらスイングを始動することで軸が安定します。ただし、一連の動きの中で腰が大きく動かないように注意しないとスウェーしてしまいます。
前後の体重移動も意識する
ゴルフの体重移動と聞くとどうしても「右足に体重をかけ、その後は左足に」ということしかイメージできないものです。しかし左右だけではなく足の前後への体重のかけ方も重要です。「左右だけでも混乱するのに前後も?」と思われる方もいるでしょうが、これも練習で意識することで自然とできるようになるはずです。
前後の体重移動とは、主に足の裏への体重のかけ方のことで、腕や上半身に特別の動きを加えるものではありません。アドレスからバックスイングに入りトップに至るまで、右足の裏はかかと側へ体重を多めにかけていき、左足はつま先側に体重をかけていきます。
トップからインパクトにかけてはその逆となり、右足はつま先に体重をかけていき、左足は土踏まずからかかとにかけて体重をかけていきます。
間違った体重移動と、その対策は?
体重移動とは基本的には左右の足へ体重を乗せる動作です。しかし、それを左右への移動や身体の傾きと勘違いされている方もいます。ここからは体重移動の間違いと、その対策について解説します。
体重移動しすぎて身体が突っ込む
体重移動を意識するあまり身体、特に上半身が左側に突っ込んでしまうケースがありますが、その原因はどこにあるのでしょうか。
体重移動を受け止める力が左足になければスウェーしやすくなります。いわゆる「左側の壁」ができていない状態です。左側に壁があることを意識しながら左足に体重を乗せ、同時に左足でその力を押し返すようなイメージをしてみましょう。あくまで身体の移動ではなく体重移動であり、回転で打つことを意識するのが大切です。
また体重移動とは少し違いますが、ハンドファーストを意識し過ぎると左側に身体が突っ込みやすくなりがちです。
左足に体重が乗らない
体重移動で左足に体重が乗らない、つまり右側に体重が残っているケースがあります。これは多くの場合、ダフリの原因になってしまいます。左足に体重がのらない原因として、バックスイングで右足に体重を掛け過ぎている、重心が大きく右に移動している、などが考えられます。練習ではスイング前半の右側に注目してみましょう。
また、インパクトで上半身が右側に残っているケースもあり、「明治の大砲(反動で後ろに下がることの比喩)」の原因のひとつです。
体重移動が遅い
「体重移動はタイミングがすべて」ともいわれていますが、移動のテンポが遅くなるとバックスイングでもインパクトでも肩が下がりやすくなります。
この場合は、むしろ右への体重移動を意識せず、最初から6割くらい左側に体重を乗せたスイングをすることで移動遅れを解消できるでしょう。
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ゴルフの体重移動の練習方法
ゴルフスイングで体重移動が上手くいかないと感じるのなら、いろいろな練習方法を試すことをオススメします。
最終的に体重移動が上手くいけば綺麗なスイングになっているはずなので、ここでは体重移動に効果があるといわれている練習方法を紹介します。
足踏みをしながらスイングしてみる
これは体重移動だけではなくスイングのリズムを良くするために、取り入れているプロもいる練習方法です。
手順は非常に簡単です。
- アドレスを決めたら右足を上げます。
- 右足を地面に戻すと同時にテークバックを始めます。
- テークバックを始めると同時に今度は左足を上げます。
- ダウンスイングを始めるタイミングで左足を地面に戻しスイングします。
これにより両足に引っ張られる形で体重移動がスムーズにいくようになります。
一つ注意すべき点として、スイングの基本はあくまで回転運動なので、左右に体が流れるスウェーには気を付けましょう。この練習はクラブを持たずに身体を動かしても効果が見込めるので、試しにやってみてくださいね。
思い切ってアドレスを見直してみる
体重移動が上手くいかない原因は、身体の使い方だけではない可能性もあります。もしかしたらスタンス幅やつま先の向きなど、アドレスが合っていないかもしれません。
長年プレーしているとアドレスを変えるのは怖いものですが、試してみると意外な発見があるものです。
参考:体重移動を身につけるための練習器具は?
体重移動に課題がある方は、アメリカの有名ゴルフ用品メーカー「キャロウェイ」が販売している「POWER PLATFORM(パワープラットフォーム)」のような足の下に敷く器具が有効かもしれません。
右足の下に置いて傾斜をつくることで、スウェーを予防しつつ正しい体重移動が効率的に練習できます。
ゴルフに体重は関係ある?
ゴルフは一打でも少なくホールアウトすることを目指すスポーツなので、飛距離アップはその手段の一つでしかありません。(遠くへ飛ばすほど2打目以降のクラブ選択の難易度が下がる)
しかし、素朴な疑問として「体重が重い人は飛距離が出る」という話が本当かどうか気になるところです。結論からいうと、体重が重い人のほうが、物理的にゴルフボールを遠くへ飛ばすのに有利です。体重とヘッドスピードの相乗効果でボールに伝わるエネルギーが決まるため、同じスイングスピードなら体重が重いほうがより多くのエネルギーをボールに伝えられるからです。
体重のほかにも、スイングスピードを上げるために有利な肉体的な要素があります。
- 体重が重い人
- 身長が高い人
- 腕が長い人
あくまで物理的な話ですが、これらの3要素を持った人は飛ばす素質を持った人といえるでしょう。
ゴルフの体重移動ができない場合はスイングを他人に見てもらおう
コースに出て人のスイングを見て「残念なスイングしているな」なんて思うことはないでしょうか?それと同じで、自分では気が付かない点も他人から見ると分かるものです。
自分の欠点を矯正するためにはまずその欠点に気付く必要があり、そのためにはスイングを人に見てもらうことが近道となります。
体重移動の感覚を一人で見つけるのは難しい
自分では体重移動できているつもりでも、実際はそうでない人も多いものです。特に経験の浅い初心者の方は、この傾向は顕著です。
飛距離があまり出ていないなど結果のところで問題がある方は、その原因が体重移動にあるかもしれません。一度詳しい人にみてもらいましょう。
正しいスイングを身につけるなら近所のゴルフスクールに通うのがおすすめ
ゴルフはシンプルながら奥深いスポーツで、それだけにしっかりとしたスイングの基礎が大切となります。ゴルフをこれから始める方はもちろん、経験者であっても長年の間に染みついてしまった悪い癖を直すために、近所のゴルフスクールに通ってみることをオススメします。
体重移動をはじめ、スライスやフック、ダフリにトップなどの悩みの原因はちょっとしたポイントをつかめば改善していくものです。ゴルフスクールなどで自分のスイングを人に見てもらい、一人では気づけなかったポイントを洗い出すと共に、正しい体重移動と綺麗なスイングを身につけましょう。